モバイバル・コード

 予想外だ、まさかパンツルックの知的な女性が来るとは。


 ドラマで良く見る、女刑事のようなパリっとした黒いスーツに白いYシャツ。

 
 鮮やかに赤く映える口元のルージュ。髪は襟足に掛かるくらいのショートヘアーのようだ。


 揃えられた前髪の長さが、この女性の几帳面さを象徴しているようだ。


「携帯電話のバッテリーパック、お届けに上がりました。お受取下さい」

  
 彼女はそう話すと、茶色い肩がけバッグから裸の小型バッテリーを3つ取り出して、オレに渡そうとした。
 

 ちょっと面喰らってしまったが……やる事は変わらない。



「早く下さい、急いでいるんです!! 電池が後、1%しかなくて……」
 

 一瞬、女の顔色が変わったのを見逃さない。


「え、そんなに無くなるまで……どうしてもっとはや……」


 オレは彼女の手から奪うようにバッテリーを取り上げて、すぐに携帯に差し込むフリをする。


「だから急いで下さいって送ったんです!! だけどあなたたちが遅くなっ……うううっ!!」



──『ガンッ』


 
 コンクリートに頭から倒れて派手な音が鳴った。


 受身をほとんど取らずにうつぶせで倒れ、激痛が走った。オレもやり過ぎたかもしれない。


「え……ちょ、ちょっと……大変……『発動』しちゃったんだわっ…!!」



 『発動』って言ったよな……?