モバイバル・コード

「いらっしゃいませ、当店のご利用は初めてですか?」


 雷也が一瞬だけ息を飲んでから切り出した。



「ハジメテヨ、ワタシタチ中国カラキタ。ココ ショメイショ イル?」



 おいおい、急に打ち合わせにない事やるなよ……。


 オレは吹き出しそうになるのを、唇を噛んでこらえて雷也にノってやる。
 


「ソウソウ、日本キタノ3回目ヨ。アキハバライイマチ オネエサンカワイイ。 ニーシャンティハオマ?」



 顔色が全く変わらない店員さんに、オレ達の努力が無駄になったかのように思える。



「はい、それではパソコンは使えませんがお部屋のみ利用可能です。ペアシートで大丈夫ですか?」



 さすがはアキハバラ、国際的な街だ。店員さんの教育もなっている。
 


「シェイシェイ、アリガト ロンサン イクヨ」



 雷也は2回、3回と小刻みに店員さんに頭を下げた。

 
 龍一だからロンさんか、そういう遊び心も必要なのかも。


 漫画喫茶は完全個室ではない。


 案内された202のブースに辿り着いたとしても、腹を抱えて大笑いが出来ないのが苦しい。


「おいっ…プッ、さっきのなんだよ」


「ああやっておけば目立たないでしょ。木を隠すには森だよ、森」


 使用用途が違う気がするが、もうどうでもいいや。


 雷也はすぐに買って来た『盗聴器』と『偽の携帯電話』に仕込みを入れた。


「雷也、何分で終わる?」


「……15分ってところ…かな」


 オレはその間に自分の携帯から奴らを呼び出す。