モバイバル・コード

 葵は下を向き、愛梨は上を向いて考え出した。


「うーん……やっぱり好きな人に振り向いてもらえない時とか、声が聞きたいのに連絡が取れない時とかかな…? 葵ちゃんも同じじゃない?」


「……うん、愛梨さん……と……一緒」


 続けて葵は携帯に文字を打ち込んだ。



【でも昔は違ったの。あんまり人に興味がないって言うのかな。携帯ばかり使ってて、少しずれてるなって自分でも分かってた。

だけど龍一とか愛梨さんとかと出会って、凄く人を意識するようになったと思うな。】



 愛梨はちょっとだけ複雑そうな顔をしたが、すぐに優しい瞳に切り替わった。


「あたしは葵ちゃんを表立って応援できないけど、変わってくれて嬉しい。それがこの男がきっかけでもね」

 
「おいおい、まぁそんな事はどうでもいいだろ。オレは思うんだ、きっかけなんて何でもいいよなって。人を好きになるきっかけも、例えば勉強をするきっかけもなんでも。

きっかけは大事じゃない」

 
 オレは不器用だから……いつも本音でしか話せないな。


「大事なのはきっかけでは無くて、そのきっかけをどうやって紡(つむ)いで行くかだと思うんだ。何にせよ、人に出会ったからには縁を大切にしたいと思ってる。

きっと慶兄が……周りを味方につけられるのってそういう所だと思うんだ。細かいことは気にしない人だった」


 葵は話を聞いて何の事か分からないかもしれないけど、流れで分かるだろう。


 賢い女の子だからな。