透明で声量のある愛梨の声に、クラスメートの男どもの意識が集中するのが分かった。


 幼馴染のオレは……もう興味はないが、このドタバタお嬢さんも相当モテる。


 クラスの男に何度も『携帯番号を教えてくれ』と言われたっけ。


 しまいには他のクラスの男にまで愛梨の携帯番号を聞かれた。



『幼馴染だから知ってますよね?』


 その度にオレは、愛梨に言わされたようなものだ。


『携帯持ってねーから家の電話しかわからねぇっつーの! 学校の連絡網あるんだから、直接家に電話してくれ』




 高校に入って、何回このセリフを言ったか分からない。


「ねぇ、まだ入らないの? あたしが打ってあげようか?」


 オレが慣れない携帯と格闘していると、雷也が割り込んできた。


「ねぇ龍ちゃん。兄貴の番号は知らない、お父さんに聞けば分かるかもしれないけど、僕は知らないよ。もうこの話はやめよう。それより見てくれないか?」
 

 慣れた手つきで携帯を操作していた雷也が、手を止めてオレに携帯を渡してきた。


 愛梨も一緒に覗き込む。


 おいおい、彼氏の前でオレと顔が近いだろ。



──── ランキング2位『L1ar_8895』



「なんだこれ……。ああ、ゲームの順位か」


 少し間が空いたが、携帯音痴のオレでも分かった。


「えー!! またランキングあがったの!? あたしは下がっちゃった、アイテムが弱いからダメなのかな……? 雷也に教えてもらった通りにやってるんだけどなぁ」


「だから、愛梨の武器はここが悪くて……」


 またゲーム談義が始まった。ここ1年くらいはずっと携帯でこの調子だ。