モバイバル・コード

 時間は22時前だ。あまりゆっくりしてる暇もない。


「会ってすぐだけど、もう遅いから送っていくよ。家の前まで行っていいよな?」



【いいけど…わたし、今日は一人なんだ。お父さんとね、お母さんが旅行で出かけてるから。】



「そうなのか?じゃあまだ時間あるのか?」



【龍一は時間あるの?二人はどうしたのかな……?】



「ああ、時間はあるよ。二人は……ちょっとな」


 葵のまぶたが少しだけ下がった、気にかけているのだろうか。



【うーん、愛梨さんとは恋のライバルだけど龍一には仲良くして欲しいんだな。もちろん雷也さんも。】



 思わず葵の瞳から目線を外してしまった。


──『ブブブブーン』



 携帯……愛梨からだ。



──【メ ッ セ ー ジ】──
■Air_1より■

【神田の駅前のシティホテル予約してあるから、早く来て!雷也が一人で大変なの!!】
────────────

「葵、頼む」


 オレは携帯を葵に渡した。


 何も言わなくても葵は何をすればいいのか察してくれた。



【分かった、直ぐに行く。葵も連れて行くけど、問題ないよな?ホテルの名前を教えてくれ。】


 10秒も掛かっていない。


 人の携帯なのに、これだけ打てる葵は本当に凄いな。


「龍一、いこ…」

 
 言葉の弱さとは裏腹に、葵はオレの右腕に自分の左腕と身体を少し絡ませる。

 
 愛梨とは違ったべったりした間隔で、なんだかこの2,3日に人生の女運を全て使い切ってしまう勢いだ。


 オレと葵は、秋葉原駅へ向かった。