モバイバル・コード

 相変わらずタワーというよりはただのビルに見える。


 今週だけで3回もこのビルを見ている。


 オレにとっては見知った場所となった。


 葵はタワーの入り口前の横のベンチに腰掛けていた。


 遠目から見ても葵だと分かるのは、どうしてだろう。


 服装は前の時より質素にしていた。


 星の装飾が施された白いコートに黒いストッキングとブーツを履いていた。


 まだ10月の上旬なのに連日の天気予報では異例の寒さらしい。


 秋はすっ飛んで冬が急加速で向かって来ているんだ。


 葵はオレの姿を遠くから見ていたのか、ベンチから駆け寄って来る。


 小走りでやってくる様子が、オレの胸の高鳴りを増長させる。


──可愛さ10割


 特に愛梨や雷也のことがあった後だ。


 イライラが止まらない、オレの荒んだ心に安らぎを与えてくれた。


 これって、俗に言う『デート』ってヤツだよな…?



──『ドンッ』


──『ギュッ』

 
 オレの胸元に再び携帯天使が舞い降りた。


 また葵の優しい髪の匂いを近くで感じている。