モバイバル・コード

 自販機でコーヒーを買い、店内のベンチに座って返信を待っていると、すぐに連絡が届いた。


──【メ ッ セ ー ジ】──
■AoI_82より■

【本当!? ねぇ、わたしは秋葉原に居るんだけど少しだけでもいいから会いたいな】
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 オレにとっては数々の悪夢を産み出した携帯電話が、今や幸せを運ぶメッセンジャーに変わっている。


 携帯を持っているからこそ出来るタイムリーな通信に、便利さを感じた。


 むしろ初めてじゃないか?


 小躍りしてこうして画面を見ているのは。


 オレは葵と2通メールをして秋葉原に向かう為に店を出た。


 携帯の時刻は21時半を示していた。


 改装中の神田駅から山手線に乗る。


 車内は込み合っている。会社帰りのサラリーマンや大学生。


 オレ達は学校に「風邪をひいて休む」と一言だけ連絡をして本戦に参加していたが、その嘘電話ですら昔の事に思えた。


 入り口ドアの横に背をつけて、ふと気づいた。


 広告が全て『モバイバル』一色なのだ。


 国を挙げてのサイトとはいえ、多くの会社が協賛している。


 きっとそういう大人の事情が広告の数に直結しているのだろう。


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国営SNS『モバイバル』

大人気御礼!賞金2億円のチャンス!!
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 何が大人気だ。何が2億円だ。よく嘘を書けるよ。


 神田から秋葉原までは一本。


 待ち合わせ場所は例の秋葉原の新名所だった。