モバイバル・コード

──午後15時20分


 電車の中では止めろと言ったのに、おかまいなしにくっつく愛梨を連れて山手線に乗った。


 帰宅前なのであまり人が居ない。


 元々乗り降りの激しい路線だしな。


 こうして景色を眺めていると、東京という都市は、駅一つ変わる事に違う顔色を見せてくれる。


 ガキの頃は気にならなかった、電車からの風景。


 今は凄く気になってしまうんだ。


 生死を懸(か)けた戦いを、誤魔化すわけにもいかず、正面から受け止めるオレ達。


 苦難が少しだけ、大人へと成長させたのかな。


 愛梨はオレの肩ですやすやと寝息を立てていた。


 オレも蜜のような匂いがする髪に顏を寄せる。


 キレイな髪のクッションが、気持ちを深く落ち着かせた。


 ……ずっとこのまま、電車が止まらなければいい。


 オレは、少しだけ人生について考えたい。


 学校の事とか勉強の事とかバイトの事とか。携帯電話とかパソコンとか。


 生きていればめんどくさい事ばかりだ。


 だけど、人は一瞬の楽しみや安らぎの為に何かを頑張っている。
 

 不器用だけど前を向いて進む人はいつだってカッコ良いと思う。慶兄のように。


 オレも誰かを守れる強い人になりたい。そう思っているからバイトだって頑張っている。


 愛梨を一番に守りたいのは嘘じゃない。