店内にベルの明朗な音が響く。


 窓の外を見るとコートを着た女性が胸元をギュっと握っていた。


 風が強くなってきたらしい。天候もどんよりしている。



「愛梨、一雨来るかもしれない」


 
 完食した愛梨が、満足そうにまたその華奢な首をオレの肩に預けた。



「じゃあ、今度は相合(あいあい)傘だね」



 ぽつりとつぶやく彼女のうなじをみて、雨が降る前にオレの身体に雷が落ちた。


 はっきりと自分の心の声が聞こえる。


──抱擁9割 愛1割


 だが、葵の時と同じように最後に残り理性がオレの欲望を止めた。
 

「ねぇ」


「なんだ?」


「ねぇ龍ちゃん……」


 甘えた声を近くで出さないで、頼むから。


 さっきから甘い匂いがし過ぎなんだって。


 それと……話ながら手を絡めて……カップル握りをするなよ。


「龍ちゃん……あたしのこと嫌い……? “異性”として」