「うーん……っと! さっきはごめんね、龍ちゃん」


 無理やり作った笑顔を見て、俺も笑いかける。


 ごめんな、オレはなんて声をかけたらいいのか分からないんだ。


「ああ。仕方ない、今日が……運命の日だからイライラもするさ。オレも眠れなかった」


「葵ちゃんとよろしくやってたんじゃないの……?」


「よろしくやってたさ、モバイバルのゲームを使って操作方法とか色々教えてもらっていた。ただ一緒にいたわけじゃない」



──嘘8割、申し訳無さ2割



 少しだけ罪悪感がある……でも、今は勝負前で揉めているわけには行かない。


「そっ……そっか」


 愛梨は覚悟を決めたようで、急に声のトーンが変わる。


「もう時間は10時10分、新宿駅の東口だよね!? 絶対に今日は勝とう! あたし達3人が力を合わせたら大丈夫だから!」


 檄(げき)を飛ばす愛梨の声を聞いて、オレも雷也も気合いがはいった。


 こういう所が愛梨の魅力だよな。


「よし、決めてこようぜ。んで、今どこ。新宿駅が広くて分からないな」

 
「こっちだね」


 雷也がオレと愛梨を先導して先へ進む。人の波が押し寄せてきて、少しはぐれそうになる。



──『右手に違和感』