モバイバル・コード

 もうこの頃にはオレ達は葵が何者なのか、気づいていた。


 家庭の事情で学校に行けずにずっと家にこもりっぱなしの女の子なんだろう。


 友達も居なく、勉強と携帯電話のゲームで遊ぶだけのつまらない毎日。

 
 これ以上正体を詮索(せんさく)するのはよそうとする空気は、オレ達3人の仲で共通していた。



──『シュッシュッボッ』



 雷也が持っていたジッポライターでろうそくに火をつける。


 少し風が吹いてきたので4人でろうそくが消えないようにぐるりと囲む。

 
 葵と愛梨の甘い匂いがして、少しだけ胸が苦しくなった。

 

──『バチバチバチバチ』



「葵、楽しいか?」


 葵は線香花火に夢中になっていた。


 手元を見つめている葵の緊張した横顔を、今ならじっくりと見つめることが出来た。

 
 風が、葵の優しい匂いを運んでくれる。