モバイバル・コード

「出来た!! 葵ちゃんやったね、ちょっと空中でぶらんぶらんしてたけど、ちゃんと回れたよ」


 ああ、しっかり回ったのは分かった。


 雷也が上に居るオレの方を見た。そうだ、その目だ。宵闇にこそ効く、男の狩人の眼だ。


 お互いに同じ事を考えている。


 多分“ピンク”のはず。

 
 落ち込んだ時には『パンチラ見て元気出して』というセリフがある。

 
 慶兄がよく見ていたギャングドラマで聞いたセリフだ。オレの心に焼き付いていつしか格言と化した。


 流石に若い女の子二人の『お宝』を拝ませてもらったのに、何も『お礼』しないのは失礼。


 ここで『アレ』を出す事が、こじつける理由として相応(ふさわ)しい。


 毎年やってることだけど、今年はやらずに夏が終わったな。


「愛梨、葵。オレが持ってきたもう一つの買い物袋を調べてみなよ。プレゼントだ」


 オレ達も二人に近づく為に鉄棒の所に向かった。


 雷也がぴしゃりと当てた。


「で、うるさいヤツ?静かなヤツ?」


 読心術でも持ってるのか、雷也は。


「時間が遅いから静かなヤツ」


 二人だけが理解出来る会話が好きだ。その人との長い歴史が言葉一つで表せられるから。


「うわぁ、線香花火だね! 凄い凄い、葵ちゃんはやったことある?」


 葵は首を横に小さく振った。