モバイバル・コード

 しばらく無言のまま、練習しているのを見つめていた。


「あんまり大きな声で意気込まないでね、近所迷惑になるから」


 雷也の声を聞いてか聞かないか、二人の笑い声が少しだけ大きくなった。 


 なぜここに現在(いま)があるかを教えて欲しい。

 
 その理由さえもずっと昔の過去の事に思えてくる。慶兄はあの星空のどこに居るんだろうな。


 明日、本当に生死を賭けた変なゲームなんてするのか?


 ポケットにある携帯の電源を今切って、オレが死ななければ全部嘘なんだよな。試してみてもいいかな。


 だって、オレにとってはこの今の、この時間さえあれば後は要らないから。


 後の『人生の時間』は、今のこの時に勝るものなのか?

 
 確かにどうなるか分からない。明日のゲームは携帯のゲームじゃなければ勝てる見込みだってある。


 だけど、生死を賭けて他人を蹴落としてまで勝つようなあさましい真似をするのはごめんなんだ。


 電車に乗る時に、人を押しのけて我先にと席に座る人がいる。ハンターのような人間。


 そういう人間に限って、携帯電話をいじるんだ。テレビでも問題になっていた。お年寄りに席を譲らない人が多くなったと。


 オレは絶対にそうはなりたくない。だからオレはいつも立っていた。


 自分が苦労する方が楽だから。人に迷惑をかけてまで、自分の我を通したいと思わない。



 なぁ、慶兄。 


 雷也は頭が良いから一人でやっていける。


 守ろうと思っていた愛梨も、しっかり雷也が守ってくれる。


 葵も自分の世界を持って前を見ている。

 
 オレは今、この一瞬の煌(きらめ)きがあれば十分なんだ。


 オレが戦う理由を教えてくれないか?