モバイバル・コード

 二人で交互に逆上がりをしているようだ。普通の公園で夜に見れる光景……ではないよな。


 オレ達はこうして身体動かした方が楽しいのかもしれない。
 

「葵、行くぞ」


「う、うう…」


 携帯で文字を打ちこもうとする葵に、オレは小さく首を横に振る。


 天使の小さな手を掴んでオレは鉄棒へエスコートした。


 苦戦している様子の二人を尻目にオレは鉄棒を掴んだ。


 秋風に冷やされた鉄棒が、オレの心を落ち着かせてくれる。


「ダメダメだな、二人とも。携帯ばっかいじってさ、身体動かさないから逆上がりの一つも出来ないんだよ。よっと」


 オレは軽々と逆上がりをしてみせる。秋の夜空を見下ろすのもまた一興だ。


 今、この国で夜空を見下ろしたのは自分だけじゃないのかな。そう思うと少しだけ誇らしい気分になる。


「葵、携帯ばかりいじってるからお前できないだろ? オレの『お嫁さん候補』は逆上がりは料理よりも必須項目なんだ」


 オレは少しだけ挑発するように目だけで笑った。


 葵の白い素肌に血が通う。顔がすぐに赤くなるのは愛梨と一緒。葵は大きく息を吸い込んだ。


「で、で…きる…」


 急に鉄棒を掴んで逆上がりをしようとする。


「ちょ、ちょっと!! 葵ちゃんもスカートなんだよ、こら雷也も何見てんの!


「だから、暗くて見えないって。分かった分かった、じゃあ愛梨と葵で練習してよ。オレ達、あの滑り台から見てるよ」


 雷也が滑り台のてっぺんに腰掛けて、オレはハシゴにぶら下がる。