モバイバル・コード

 葵はオレのパーカーの裾を掴んで、片手で携帯電話の高速操作を見せた。


『顔が赤いから風邪引いてるんじゃないのかな。風に当たらない方がいいと思う。龍一に膝枕してあげたいな。』



「バカ、あの二人が居る前で出来るかっ!」



【じゃあ、後でね。それともしちゃダメなの?】



 葵が口を少しだけへの字に結んで上目遣いでオレを見る。


 頼む、そんな濡れた瞳で見ないでくれ。


「あ、あのよ、葵は誰かを好きになったことあるか?」


 少しモジモジする姿がいじらしく、オレの感情をより複雑にさせる。


「う、うん…」



【龍一】



「って、そうじゃなくて、オレ以外だよ、オレ以外。オレ以外ってなんでオレはオレで葵のいう事を認めてる事になってるんだ、これは違う違う」


 もう止めてくれ、これ以上ドキドキさせないでくれ。


【龍一、なんで焦ってるの? かわいいな。他に好きになった人はいないよ。みんな変な子ってバカにしてたな。だから学校に行けなかった。】


 葵は携帯を膝の上に置いて両手の指先だけを合わせるしぐさをした。何かのおまじない?


「そうか、でも葵は頭いいし、普通の女の子だと思う。ただ話すのに少し“勇気”が足りないだけじゃないか?」


「ううん…うんうん!」


 
 大きな瞳がパッと開き、出会ってから一番驚いた顔をする。