モバイバル・コード

「おい、そういう大事な言葉はみんなが見る前で打つなって……」

 
 葵に耳打ちをする。鼻腔をくすぐる髪の匂いがまた愛梨とは違う……優しく包まれる香りがして、少しだけ息が詰まる。



【うん、後で二人きりでお話したいな。龍一のこともっと知りたい。わたしの大切な人。】



──動揺5割、嬉しさ5割



 さっきから、『全部』がおかしい。胸が凄く苦しくなり、身体が熱くなる。


 オレだってこの感情は知ってる。


 天使に心を囚われているんだ。


「むぅ、なんかさっきからイライラする……つまんないな」


 愛梨はすっかり鉄棒の高さを越えた身体で、逆上がりをしようとしていた。昔は逆上がりの練習を3人、いや4人でやってた……慶兄と。

 
 オレが後ろから押してあげた時に、初めて愛梨は逆上がりが出来たんだ。


「まずい! 愛梨見えるって!!」


 雷也が気づくと同時にオレも気づいた。



「ああっ!! スカートなの忘れてた、つい公園に来たら逆上がりしちゃうんだよね……龍ちゃん見たでしょ!?」


「暗くて見えるかよ」



 スカートで逆上がりはまずいし、女の子なんだから気づくだろ……。