モバイバル・コード

 バッグの中身を葵は見せてきた。2万円と携帯電話、それに女の子がよく持っているポーチ。手帳もある。


「あのね、まずそのお金はどうしたの? 僕らのような高校生だって持ってな……いる人も居るけど、龍ちゃんは一生懸命貯めたお金なんだよ」


 雷也が一瞬だけ詰まった様子を見て思わず咳が出た。こういう間違いを犯さないヤツだからこそ笑えるな。


 葵は少しだけ目を細めると、鋭い事を言う。



【そうなんだ、だからと言って、新札の100万円を夜中に持ってるのもおかしい気はするんだけどな】



「まぁまぁ、葵はお金持ちなんだってよ。さっき話してたんだけどよ、世田谷の大きな家に住んでるんだって」


 なんとなく葵を責めているような気がして、オレが間に入った。


「そうなの? まぁ…そう見えなくはないけど、なんだかあたし達とは別の世界の人間みたい」


 愛梨は少しだけつまらなそうな表情をした。確かに別世界の人間かもな。


 携帯の世界から飛び出してきたんじゃないのか。


「なぁ、葵は高校生なのか? 明日学校だろ?」


 葵はブランコの前にあるベンチに座る。


 オレも隣に座り、雷也と愛梨はベンチの後ろから覗き込むように葵の携帯電話を見ていた。



【うん。高校1年だよ。でも小学校3年生から学校に行っていないんだな。毎日家庭教師に教えてもらってるの。

だからほとんどお家でヒッキーなんだ。お金持ちっていう感覚は無いけど、でもそうなのかもしれないな。】



「なんだ、オレ達の1個下じゃん。ヒッキーってなんだ? アイドルか?」


 オレがつぶやくと葵はクスクス笑い出した。


「ちょっと、龍ちゃんなんで知らないの!? それくらいは知ってるかと思ってたけど、ヒッキーは『引きこもり』ってことだよ」


 愛梨がバカにするように口を尖らせた。オレは少しだけむっとした顔をし返した。