モバイバル・コード

 信号が点滅しはじめた。オレの前を走る乾いた都会の天使はスピードをあげた。


「止まろう!」


 呼びかけたが天使は止まらない。繋いだ指先がギュっと自分の意思を確かに伝えてくる。


 言葉が要らない時って……ある。


 ギリギリ渡り終えて、本屋の前に来た。


 二人とも肩で息をしていた。。


「ど、どうしたんだよ急に…ってよくその格好で走れるよな……」


 
【ごめんなさい。こういう服装、龍一は嫌いかな?】

 
 オレは首を横に振る。その人に似合っていれば関係ないと思ってる。


 葵が上目遣いで見つめてきた。本屋の明かりが煌々(こうこう)と少女の姿を照らした。

 
 きっと絵描きが近くにいれば、この瞬間を描きたがるに違いない。 


【写真撮らせて欲しいな。二人のツーショット。龍一、明日から旅行行っちゃうんでしょ?しばらく会えないからわたし寂しいな。】



「なるほど、あそこじゃ暗かったからここまで来たのか……いいけど……とりあえず葵の事を教えてくれ」



【いいよ、じゃあ写真撮ってくれる?】