「ちょっと警察呼ぶからね。さっきから名前も言わないし、こんな時間に子供が出歩いてるなんておかしいからね」


「う、ううう……んっ! んっ!」



 後ろ姿は……子供……?


 背格好からそこまで幼そうには見えないが、フリル付きの白いスカートが幼い印象を与えている。


 少女はしきりに携帯電話の画面を店員に突き付けていた。



「んっ! ん!」


 初老の店員がメガネを下げ、目を細めて携帯電話を見た。


「たかしろあおい……お兄ちゃんに頼まれたから……アイスを買いに……きた…?」



「うんっ! うん!!」


 少し横から覗き込むと、100円のカップアイスがレジの台に置いてある。


「あのね、君のような子供のお兄ちゃんがそんなお金持ってるわけ無いでしょ!警察呼ぶからね!」


 少女は右手に携帯を持ち、左手に何かを持っていた。



──万札1枚



 確かに、この子が持っていたら『なんだろう』と思うかも。



「事務所に来なさい!!」



 店員は嫌がる少女の右手を掴んで、レジの横にある事務所へ引っ張ろうとする。



「んっ…っ! い、い、やぁぁ……」



 手を振りほどいた時に、少女と目があった。