──午後9時34分


 携帯電話の時計を自然と見る。


 右腕の時計がタダのアクセサリーと化す事が少しだけ怖い。


 オレは専用の携帯バッテリーで携帯を充電している。

 
 竜二から貰った紙袋にはメモが一枚と充電器が3つ入っていた。通常の方法で充電をした際にはカプセルが携帯電話と反応して『執行』になるそうだ。竜二の忠告をここは聞くしかない。


 もう一つの紙袋に入っていた『900万』は部屋の片隅に手付かずで置かれていた。


 平常時であれば狂喜乱舞(きょうきらんぶ)して喜んでいただろう。

 
 竜二が去り、オレと愛梨は一度家に帰り、着替えてから再び雷也の家にやって来た。


 そう、死闘からすでに3時間以上が経過していた。


 ベッドの上に重なってある布団の乱れが、昨日から今日にかけての一連の流れを示していた。


 『900万』が部屋にあっても、愛梨はルンルン気分にはなれないようだ。机の前で体育座りをして、黙っていた。


 雷也は部屋のパソコンで一生懸命『モバイバル』について調べている。 


 オレは仰向けに寝転がり、ぼーっと天井を見つめる。


 実は3人共、さっきまでちょっとした『パニック』になっていた。

 
 他の大人に話をした所で、もみ消される。全力で。


 警察も頼れない、国も頼れない。


 『それじゃあ誰に相談するの?』という話でオレ達の話し合いは何度も止まった。



 今はその事後の様子だった。