モバイバル・コード

──『ガキンッ』


──さよなら


──そう思った瞬間


 ナイフはオレの首元ではなく、オレの目の前のアスファルトに突き立てられていた。


「っく…くはは!! はーっはははは!!」


 背中に馬乗りになっている竜二が、高笑いをあげた。


「どういう…こと?」


 掌で顔を覆っている愛梨が、こちらを見つめた。


「……こういう事だ」


 スーツの内ポケットから何かを投げた。


──『注射器』


 鉄製のカバーがついている、見た事がない形の注射器。


「なんだよ、それは……!! どういうことなんだ!!」


 雷也が竜二ににじり寄った。


「どうもこうも、途中から楽しくなってな。役者魂に火がついてしまったのさ」

 
 竜二はオレの背中から降りて立ち上がり、タバコを取り出し火をつける。


 オレはすぐに体勢を直して、愛梨と雷也の方に後ずさりした。


「……オレも聞きたい。どういう事だ? 殺すんじゃなかったのか?」