モバイバル・コード

「だからなんだよ、これがあんたにとっての『正解の行動』なら雷也と代えてくれ。あんたも頭良いな、全部知ってて演技してたのか」


「まぁそうだな、車の運転が下手っていうのは分からなかった。

後は全部分かってたよ。お前の投げる速度まで読んでた。後は賢い坊やだから、どう転んでも負けたという事は自覚してるよな」


 片目野郎は、オレの目を見てハッキリと語る。

 
 オレは、最後の気持ちだけで喰らいつく。


 自分の眼だけは、光を消したくない。


「いい眼をしている。霧島慶二にそっくりだ。奴は強かった。あいつは3人がかりで殺ったんだ。オレがタイマンで負けそうになってな。

本当は楽勝でオネンネしてもらおうと思ったんだが、物怖じせずに前へ出てきた。お前みたいにな」


 ごそごそと片目野郎はスーツの下の白いワイシャツを胸の辺りまでめくる。


 靴の痕(きずあと)だ。


 慶兄の靴の痕が、胸板に赤紫色を残していた。


「一発、腹にキツいのを貰ったんだ。少し長くなるがもう少しはっきりと聞きたいか?」


「頼みます」


 わざと敬語にする。


 敵とはいえ、オレが完膚無きまでに叩きのめされた男に対して敬意を表したい。


 変なプライドだった。


「俺は暗闇の格闘術が得意でな。奴を殺った時は『イルミナスタワーの30階』だ。あの、撮影場所だ。応接室にいる情報を得ていた俺達は、フロアの電気は全て消して、応接室だけ点けておいた」


「あなた達は目を暗闇に慣れさせて、それで襲ったということですか」


「鋭いな、お前何か格闘技でもやってたのか。そうだ、俺だけ部屋に入るデスクに座る霧島慶二を後ろから襲った……坊や、何をされたと思う? 当ててみな」