モバイバル・コード

「頼む、オレには何もないんだ。何もないからそいつの代わりに殺してくれ、頼む……。

こいつらは高校を卒業して、大学を出てから結婚して幸せな家庭を築くんだ…お願いだ、オレをやって下さい…っ!!」


 グラサン野郎改め『片目野郎』が予想通り、大笑いした。


「ははははは!! いやぁ、霧島会長が言っていた通り、お前凄いよ、ホント。その胆力、俺の所に来たらもっと鍛えてやれるのになぁ。

東大出のエリート坊ちゃんよりよっぽど凄い。嘘じゃない。

坊や、一つ教えてやる。男の条件ってヤツを。いくら頭があっても、素晴らしい肉体があっても最後はココよ」


 片目野郎はナイフの柄で、心臓を指した


「胆力よ。肝っ玉の小さい奴、口だけで行動しない奴が多い世の中で、お前は頭が働いたし、身体も動かした。

普通、ビビって何も出来ないぞ。そこのお嬢ちゃんみたいに」


 オレは裾を掴む震える愛梨の手に自分の右手を重ねた。


 そうだ。


 慶兄が良く言ってた。


 喧嘩は『先手』を取った方が基本的には勝つって。


 オレも戦争物の本は好きでよく読んでいたからわかる。8割方、先に仕掛けた方が勝つ。


 残りの2割は仕掛けられた方が勝った。当たり前だ。


 じゃあ、どうなれば『先手を打ったのに負ける』のか?


 コイツのように『とんでもない罠』を張られて負ける。


 もしくは、オレ達のように『調子に乗って』負ける。
 

 罠にハマり、調子に乗っていたオレは負けるに決まっている。


 オレは決定的な過ちを犯していた。