モバイバル・コード

「コイツは絶対に殺す。坊や、お前は本当に頭が切れる。元会長が言った通りだ。正直、短時間にあそこまで仕込むとは驚いた。

だけどな、こっちも『プロ』なんだよ。依頼を受けて穏便に送り届けようと思ったのに、ここまでバカにされては俺のプライドが許さない」


『カチャ』


 雷也の首元にナイフを当てたまま、グラサン野郎が左手でサングラスを外す。


 左目の方に切られたような痕がある。刀傷というやつか。


 塞がっている所を見ると、完全に見えないみたいだ。


「待て、殺すのはお前個人の私怨(しえん)だろ!?」


「そうだ。流石にここまでコケにされたら俺も俺自身を許せない。こいつだけは殺らせてもらう」


「ならオレを殺せ!!そいつは関係ないっ!!」


 オレは愛梨を振り切り、一歩前へ出た。


「龍ちゃん! いい、僕が死ぬ! 死んで兄貴の所に行く!!」


 雷也が苦しそうに声を出す。


「バカ野郎っ!! 兄貴は、慶兄はお前のこの世での幸せを願ってるに決まってるだろ!!

死んだ人間は戻っては来ないが、お前には愛梨がいるだろ! 死ぬならオレだ、オレは慶兄が消えた今、未練も何もない」


──本音9割、嘘1割