モバイバル・コード

 先に車を降りている雷也と、一瞬だけ目を合わせた。


 多分、親友は分かっている。オレの性格を。あの幼い時のトラウマから、オレを救ってくれた友達とその兄貴。


 死ぬなら、二人を守って死ぬ。死んで慶兄に償う。


「愛梨降りろ!!龍ちゃんの気持ちを無駄にするのか!!」


 雷也は力任せに愛梨を引きずり降ろした。


 これで車内にはグラサン野郎とオレだけ。


「な、分かった!! やめてくれ!! なっ!」


 グラサン野郎が、両手を合わせて仏に拝むように擦り合わせた。


「動くな!! お前、オレが本気じゃないとでも……思ってるのか?」


「思ってない、思ってない、お前は本気だ。俺も『プロ』だ、お前の目を見れば分かる」


「何が分かるんだよ。オレはただの高校生だ。人殺しのプロじゃない。ただ、人より『失うものがない高校生』ってだけだ」


 一瞬、静まり返った。


「だからオレは、お前を殺しても……オレは微塵も困らない。困るのはオレだけだから。そこら辺の事情を分かってオレはやってるんだよ」


 グラサン野郎の額に、少しだけ汗が滲(にじ)み出た。


 ここまで先手を取られたことがない、そういう表情をしているようにも見える。


「分かった、お前は凄い。高校生とは思えない。『モバイバル』の参加も取りやめるように言うし、『兄貴』のことは済まないと思ってる。

だが、分かってくれ、俺も家族が居て仕事でやってる。国の仕事だ、まだ子供もいるんだ」


「だから?」