──『真紅のジッポライター』
雷也の手に慶兄の形見が握られていた。
この前、イルミナスタワーの上で貰ったあの遺物だ。
底冷えした声が室内に響く。
「ざまぁないよ。あんた。僕達を脅していたかもしれないが、こんな狭い車内でオイルをかけられて粋がってる。兄貴もあの世で笑ってるさ」
多分、次はナイフが飛んでくるかもしれない。
オレはこっそり脱いでいたシューズを両手にはめていた。
靴の裏面はゴムで丈夫なつくりで、これなら一発で刺される事はないはず。
万が一の事も考えるのは、戦の掟だろう。
「……おいガキ、お前いつからそのオイルに気づいた」
グラサン野郎は少しだけ観念したように見えた。
「雷也はオイルに気づいた。オレが気づいたのは運転の荒さ。愛梨が気づいたのは普段『後ろに座ってる上役』だろうという事だ」
グラサン野郎が焦っている。肌で感じる。
「ど、どういう事だ」
「簡単な話。お前は運転が下手だ。曲がる時にいちいちブレーキをかけてる。愛梨はこう見えてもちょっとしたお嬢様なんだ。父親がお偉いさんでね。
さっきからスピードメーターをチラチラ確認し、ナビの操作もおぼつかない所を見ると……お前は普段、『運転手』ではないと愛梨が気づいた」
愛梨も言いたい事があるようだ。
「あたし、分かるよ。お父さんいつも仕事で後ろに乗ってばかりだから、運転下手だもん。家の車のナビだって操作出来ないし」
雷也の手に慶兄の形見が握られていた。
この前、イルミナスタワーの上で貰ったあの遺物だ。
底冷えした声が室内に響く。
「ざまぁないよ。あんた。僕達を脅していたかもしれないが、こんな狭い車内でオイルをかけられて粋がってる。兄貴もあの世で笑ってるさ」
多分、次はナイフが飛んでくるかもしれない。
オレはこっそり脱いでいたシューズを両手にはめていた。
靴の裏面はゴムで丈夫なつくりで、これなら一発で刺される事はないはず。
万が一の事も考えるのは、戦の掟だろう。
「……おいガキ、お前いつからそのオイルに気づいた」
グラサン野郎は少しだけ観念したように見えた。
「雷也はオイルに気づいた。オレが気づいたのは運転の荒さ。愛梨が気づいたのは普段『後ろに座ってる上役』だろうという事だ」
グラサン野郎が焦っている。肌で感じる。
「ど、どういう事だ」
「簡単な話。お前は運転が下手だ。曲がる時にいちいちブレーキをかけてる。愛梨はこう見えてもちょっとしたお嬢様なんだ。父親がお偉いさんでね。
さっきからスピードメーターをチラチラ確認し、ナビの操作もおぼつかない所を見ると……お前は普段、『運転手』ではないと愛梨が気づいた」
愛梨も言いたい事があるようだ。
「あたし、分かるよ。お父さんいつも仕事で後ろに乗ってばかりだから、運転下手だもん。家の車のナビだって操作出来ないし」
