モバイバル・コード

「まぁ無理だろうな、俺は『プロ』だよ。大学時代は90kg級の地方大会は優勝した」


 耳が『餃子』みたいに潰れている。


 ここから見える範囲でコイツの風貌を見ていたが、柔道や柔術といった寝技主体の格闘技経験者なのは明らかだ。


「オレもそう思うよ。じゃあどうすれば、兄貴を殺ったアンタを殴れると思う?」


「ゴホッゴホッゴホッ」


 今度は大きく雷也がせきこんだ。


「ハハハ、笑わせるねぇ。お前。そろそろ調子に乗るのもいい加減にしておけよ。腕の一本でも折らな……!?」


──『ビチャッ』


 運転席の後ろのジッポライターのオイルが、グラサンの顔にクリーンヒット。



 窓を開けていたのはオイル臭を隠すタメ。


 話を誤魔化したのはオレの手にジッポオイルを溜めるタメ。


 雷也がわざとらしく咳をしたのはそっちに注意を寄せるタメ。


 伊達に幼馴染じゃないんだよ。こっちは。


「この野郎っ!!」


──『シュッシュッ』