モバイバル・コード

 ハハハと高笑いをしながら男はワゴン車を操っていた。


「雷也、止めろ、落ちつけ」


「殺す、絶対に殺す!!」


 掴みかかろうとしている雷也を、オレは懸命に止めた。


「雷也、落ち着いて、落ち着いてよ!!」


 愛梨も必死に呼びかけるが、その顔は阿修羅の如く歪んでいる。


「許さない、僕は絶対にお前達を許さない!」


 友人の鬼の形相は見たくはないな……。


 が、この事情ならこいつを止められるわけもない。


「雷也、待て。オレも絶対に許さない、気持ちは同じだ」


 なんとか理性で怒りを、激情を心の奥底に眠らせ、雷也を押さえつけて5分ほど車は走った。


 携帯の時間を見ると17時前。


 すでに日は落ちて闇が迫っていた。


 男は時折、軽くサングラスを下げてスピードメーターを気にする様子。


 案外真面目な奴なのかもしれない。


 この景色、もう直ぐ雷也の家に着くはずだ。