「このガキ!! 何しやがる! あーもしもし、大丈夫です、ご迷惑をおかけしました。失礼します」


「乱暴はやめてよ!! アンタ警察でしょ!? 龍ちゃん、大丈夫?」


 愛梨が駆け寄りオレの身体を支えた。


「バカ野郎! お前ら、これは立派な公務執行妨害だぞ! ふざけた事するんじゃねぇ!!」


「アンタ、さっきからオレ達の話が嘘だと決め付けてる、オレもあんたの会話が嘘だと思って何が悪いんだよ!!」


 ロビーで大声を出しているせいで、他の署員が事務所から出てきた。その中の一人。


 グレーのスーツ。銀縁のメガネ。


 他の二人の署員の先頭に立つ細見の男が、オレ達へ冷たい視線を向けた。


 胸ポケットからちらりと見えた蒼いハンカチが、男の上品さと知性を表していた。


 この人、雷也と同じ匂いがする。


「どうしたんですか、武藤さん」


「こいつらが訳の分からない事を言うからだよ。なんだか政府の会長が殺されたとかうんぬんとか言いやがって。全然納得してくれなくってよ」


「そうですか、それは困りましたね」