不幸ネット

「おはよう、ございます……」

 恐る恐る会社の出入口をくぐる。

 身構えながら自分のデスクを目指すと、手前にいた美樹に声をかけられる。

「おはよ、良美さん」

「おはよ……ってあれ?」

 目をやった上沼のデスクに、彼女の姿はなかった。

「もう、寝坊したでしょ? 顔ヤバいって」

 美樹は押し殺したように笑いながら私の顔を見た。

「上沼さんは?」

 正直今は恥ずかしさよりも、上沼の姿が見えない事に意識が回っていた。

 上沼は大体仕事が始まる十五分前には出社している。

 もしかして遅刻?

 それは、私が入社してから一度だって目にした事のない光景だった。