「お昼、結局来なかったね。何かトラブル?」

 美樹は仕事の事を言っているのだろう。

 上沼は今席を立っている。

 心配そうに私の方へと視線を向ける美樹に「何でもないよ」と言葉を返すと、何となく意味が伝わったのかそれ以上は深く聞いてこなかった。

「あった!」

 会社の出入口から上沼のご機嫌な声が響いた。

「そういえば帰りにお手洗いに寄った時に置いたんだったわ。本当に良かった、誰も使ってなくて」

 にこにこと笑顔をその高慢そうな顔に貼り付けて上沼が自分のデスクへと戻った。

 私は白けた目を上沼の背中へと向ける。

「さっきは変な事言ってごめんね? でもあなたも今後気をつけて」