不幸ネット

「財布がないの」

 上沼は短くそれだけ言った。

 で?と返したかったけど、もちろんそういうわけにはいかない。

「財布、ですか。いつからないんですか?」

 できるだけ上沼を刺激しないよう、私は言葉少なめに返した。

「知らないわよ。でも、午前中にコンビニにリップクリームを買いに行った時はあったの」

 就業中に何をやっているんだ。

 リップクリーム?

 私は気持ちが顔に出ないよう、真剣な眼差しを上沼に向ける。

「あの……その時に財布は持って行かなかったんですか?」

 何かの勘違いだろうと言っているように伝わらないよう、私は慎重に言葉を選んだ。

 どんな言葉が上沼の腹の虫を刺激するか分からない。

「いいえ。大した金額のものじゃなかったから、財布から小銭だけ持って出たの」