不幸ネット

「ない。確かにここに入れておいたのに。何でよ」

 上沼が鞄の中を探りながら苛々とした声を上げる。

 私を含め、近くにいた数人は何事かと耳だけをそちらに向けた。

 目が合えばきっと厄介な事になる。直感的にそう感じているのだろう。

 誰一人としてそちらへ視線を送る人はいなかった。

 鞄の中という事は、恐らくこのタイミングからして、携帯か財布か……

 私はさりげなく上沼の前を通り過ぎようとした。

「ちょっと、瀬野さん」

 呼び止められて、私は心の中で大きく溜息をついた。