「良美さん……」

 翌日、私は面会室で美樹と向かい合っていた。

 美樹は悲痛な表情でこちらを見ている。

 たった一枚を隔てたすぐ向こうに彼女はいるのに、その距離は果てしなく大きく感じた。

「ごめんね。こんな事になっちゃって……」

 美樹の目を真っすぐ見れない。

 私はうつむき加減につぶやいた。

「……戦うんだよね? 諦めたり、しないよね? 私、信じてるんだよ?」

 美樹が必死に身を乗り出した。

「ごめん……」

 私は静かに首を横に振った。

「そん、な……」

 私の言葉に、美樹は力なく椅子に腰を落とした。

「もう、私には関わらないで。面会も、今日で最後」

「ちょっ……待って!」

 背を向ける私に美樹は声を荒げた。

「短い間だったけど、本当にありがとう。美樹ちゃんの気持ち、すごく嬉しかったよ」

「良美さん!」

 背中越しにそれだけ残すと、私は面会室を後にした。

 扉の向こうから美樹の泣き叫ぶ声が聞こえてくる。

 チクリ、と心が痛んだけど、私は全ての感情を心の奥底に押し込めるようにして、真っすぐ前を見据えた。

 美樹ちゃん、さようなら……

 これが私の……

 物語の結末。