「良美さん!」

 気付いたら私は鞄を片手に玄関へと駆け出していた。

 背後から美樹が慌てて駆け寄ってくるのにも構わず、ヒールにつま先を突っ込んで勢いよく玄関のドアを開ける。

「良美さん! お願い、落ち着いてよ!」

 美樹が私の腕を掴んだ。

「離してよっ! あんたなんか大嫌い!」

 私はその手を強引に振り払い、思い切り睨みつける。

「……っ」

 私の剣幕に、美樹は言葉を失ったようだった。

「もう、私に関わらないで! お願いだからほっといて!」

 一息で言い切ると、私は一気に階段を駆け下りた。