「そ、そこに……いる……」

 目を閉じたまま、私は震える手でバルコニーを指差す。

「良美さん!? ねえ、何もいないよ? どうしたの一体!?」

 美樹の私を揺さぶる力が強くなる。

「そこにいるじゃん!……って、え……」

 荒げた声は尻すぼみに小さくなる。

 恐怖に震えながら視線を伸ばした先。

 カーテンの隙間に、さっきの女の首はなかった。

「何、で……?」

 もう、一体何がどうなっているのか分からない。

 私はそのまま固まってしまった。

「ね? 何もいないでしょ? さっきから良美さん、ちょっと様子がおかしいよ? 一体どうしちゃったの?」

美樹も同じくわけが分からないといった様子で、バルコニーの私とを交互に見つめた。