不幸ネット

「さて。じゃあそろそろ行こっか」

 食べ終わった空の容器などを袋にまとめながら、美樹が立ち上がった。

「多田さんは? まだ残業?」

「僕はまだちょっと仕事残ってるからね」

「営業の人って大変だよね。じゃあ、私達は先に失礼しますね。締め、お願いします」

 美樹が軽く頭を下げたのに合わせて、私も多田へと会釈をする。

 私の前でもこんな小芝居をしないといけないなんて、社内恋愛もきっと大変なんだろうな。

 鞄を肩にかける。

 社内恋愛なんて考えた事もなかったから、うちの社内規定をよく確認したわけではないけれど、一般的には禁止されているのが普通だろう。

 もちろんそれは、公平性を保つためや、不正行為を防ぐためには仕方のない事。

 とは言っても、感情の問題だ。

 なかなか規則で縛り付けるのも難しいものがある。

 なので、大抵はそういう関係になったとしても暗黙のルールで公にはしない。

 それが社会人として当たり前の行動だ。