ー放課後
「はい、集合!今日の部活を始めます。お願いします」
「お願いします!」
俺達はストレッチと基礎練習を終えて来週の軽音部とのライブの練習を始めた。
俺と岸田先輩は踊らないからみんなを指導するという形だ。
「じゃあ、好美考えた振りを1回踊ってみせて?」
「はい!」
先輩は昼休みに踊っていたようにみんなの前で踊ってみせた。
笑顔で大きく楽しく踊っていた。
「じゃあ、振り写しいきます。ファイブ、シックス、セブン、エイ」
1時間後みんなひと通り振りを覚えたようだ。
「よし、じゃあ通そう!岸田と星くんはみて、終わったらなんか言ってね」
女子達は踊り終わって俺と岸田先輩の前に集まった。
「1年生達は初めてだと思うんだけど、こうやってみてもらったあとになんか言ってもらうのね。良かったとこも悪かったとこも。じゃあ、まず岸田から」
「全体的に振りが流れてる、みんな。足踏みしてるんだからそれに合わせて止めるとか。じゃないと振りにメリハリがない。それと好美以外みんな無表情に近い。だから笑顔で踊ってる好美がいい意味で目立ってる。せっかくソロもあるからソロは思いっきり踊っていいと思う。じゃあ、星くんなんかあればどうぞ?」
「あ、えっと、岸田先輩も言ってたんですけど、笑顔が少なかったんでせっかく明るい曲だからもっと楽しそうに踊ったほうがいいと思います」
「はい!」
「じゃあ、水分補給したら今言われたことを意識してもう1回!」
「はい!」
女子達が水分補給してる間岸田先輩は俺の隣に座った。
「今の見てどう思った?」
「河上先輩が良くも悪くも目立ってたなって…」
「好美は1年の時からそうだった。あの小さい体で誰よりも大きく踊るから。表情だって意識してるんじゃなくて無意識についてるんだと俺は思ってる。だからきっとみんな好美に目がいくんだろうな」
「そうかもしれないですね…」
「はい、じゃあ通すよー!」
部長の声で女子達が位置についた。
そしてまた踊りだした。
俺はやはり河上先輩に目がいく。
さっきより他の人も表情がついてるけど、やっぱり俺は河上先輩が1番だと思う。
岸田先輩が言ってたことが分かったかもしれない。
他の人は言われて意識的に表情を作っているけど河上先輩は意識的に作られた笑顔ではなく河上先輩の、河上先輩らしい笑顔だった。
「うん、よくなったと思う」
「ありがとうございます」
その日はひたすら軽音部のライブの練習をしていた。