その歌は明るくポップな曲だった。
先輩は笑顔でとても楽しそうに踊っていた。
「どやった?」
「上手でした」
「ありがとう。この歌もさ、聴く度にああ、頑張らないとなって思えんねん。さっきの曲とは違って明るいから余計頑張れるっていうか?無理だと思っててもできる気がすんねんな~」
先輩は遠くを見ながら言った。
キーンコーンカーンコーン
「あ、じゃあまた部活でな!」
俺は先輩の暗い顔が忘れられなかった。
でも、先輩に問い詰めたところですんなり答えてくれないし先輩が苦しむだけだから俺は無理に聞かないことにした。
掃除の時間俺は俊に質問攻めされた。
「お前いつまでうじうじしてるつもり?」
「先輩だっていろいろあるんだ。先輩は繊細なんだよ。俺が気持ち伝えたらきっと先輩を苦しめるんじゃないかって」
「でも、お前だって辛いだろ?」
「俺は先輩が辛いほうが辛い。少しでも先輩を楽にしてやりたい」
「なるほどな~。あ、お前にいいこと教えてやるよ!」
「なんだよ」
「今日歌謡祭やるだろ?お前それみろよ!」
「なんで俺がそんなのみねえといけねえんだよ」
「いいからいいから。先輩のことを思うならみてみろよ」
「わかったわかった。みればいいんだろ」
「みたら何か変わると思うぜ?」
俊には意味深にニヤリと笑った。
俺はよく意味が分からなかった。