「はい、じゃあ好美ちゃんお疲れ様!もうあがっていいわよ」

「ありがとうございます!お疲れ様です!」

「先輩、お疲れ様です」

「星くんありがとう」

「じゃあ行きましょうか」

「うん!」

俺は帰り道先輩に聞いた。

「先輩、明日までに振り作れるんですか?」

「うん!さっき頭の中で考えとったし帰ってからまた考えるから!」

「ちゃんと寝てくださいよ?明日だって朝バイトですよね?」

「だいじょぶ!わたし振り覚えるのと作るのはやいから!」

先輩はそう言ってにっと笑った。

「俺楽しみにしてます。先輩の作った振り」

「そんな期待するほどのもんでもないけどな笑
でも好きな曲の振りやからきっといいのができるはずやで!」

「あの、先輩…」

「ん?」

「ずっと聞きたいことがあって…」

「なになに~?」

「こないだ言ってましたよね?ひとり暮らししてるからバイトしてるって。理由を聞いたけどやっぱり先輩は頑張りすぎなんじゃないかなって思うんです。出会ってそんな経ってない俺が聞くのもどうかと思うんですけど…なにが先輩をそんなにも頑張らせるんですか?俺、先輩が心配です。こんな小さな体であんなに踊って働いて。周りにも頼らないで1人で全部抱え込もうとして。そんな先輩が俺は心配なんです」

俺がそう言うと先輩は急に立ち止まった。

「先輩、?」

「星くんにはそう見えるん…?」

「はい」

「わたしね、お父さんを事故で亡くしとるんよ」

「え…」

「わたしが中学生の時やったな。お父さんはずっとわたしのことかわいがってくれて、色んな物買ってもらったし、色んな所に連れてってくれた。いつも優しくて家族のために働いてるお父さんが大好きやった。でも、お父さんが家に帰ってくる途中にな飲酒運転の車が突っ込んできてん。それでお父さんは亡くなってしもてん。わたしだってすっごい悲しくて辛かったけどそれ以上にお母さんが辛かったはずやねん。それでもお母さんはわたしのために働いてくれてっ…だからっ…」

先輩は涙ぐみながら話してくれた。

「お父さんは関西の人やったからお父さんのことを忘れないように、いつかお父さんが帰ってくるんじゃないかってっ…」

「それで関西弁…」

「こんなんしてもお父さんは帰ってこんのにね。自分でも分かってるけどっ…」

ぎゅっ

「ほ、星くん?」

俺はたまらなく先輩を抱きしめた。

「先輩、1人で頑張らないでください。1人で抱え込まないでください。先輩は1人じゃないです。俺がいます。俺がそばにいます」

「うぅ、」

「先輩。我慢しないでください」

俺は先輩の背中を優しくなでた。

「星くん、だいじょぶ。ありがとう」

先輩は目に涙を溜めながら笑った。

きっと先輩は人前で涙を見せない性格なのだろう。

「いきなりすいません」

「ううん!だいじょぶ。嬉しかった、星くんがそういうふうに思ってくれとって。ありがとう。じゃあ、また明日な?おやすみ」

「おやすみなさい」

先輩が家に入ったのを確認して俺は家に帰った。