たった一人で教室にいる時点で、恐怖は全身を駆け巡った。
「誰も・・・いないの・・・?」
教室から出ると、薄気味悪い廊下がいつもより長く感じた。
「ねぇ・・・っ!!誰もいないの!?」
自分の声が廊下に響き渡る。すると奥から声が聞こえた。
「誰かいるのかっ!?」
「見て!星羅ちゃんだよ!」
奥からバタバタと人が駆け寄ってくる。
「蒼井!?」
「馬鹿野郎!勝手にどっかいくんじゃねぇよ!」
「え?」
さっぱり理解ができない。
起きたときには、寝過ごしてしまったような感じだったけど・・・。
「私、蒼井に昼休み屋上に呼ばれた事しか覚えてない・・・。」
「はぁ?屋上になんか呼んでねぇよ。」
「え?」
「お前こそ、今日ずっと上の空で、俺の話聞いてなかったじゃん。」
そうそう、と言わんばかりに頷くみんな。
「星羅ちゃん、ずっと窓見てブツブツ言ってるから、おかしいねって話したんだよ。」
窓?私は窓は見ない。カーテンを閉めるからだ。
私の席は、日中ずっと太陽に当たって暑い。だから、カーテンはずっと閉まってるはずなのだ。私が起きたときも、確かにカーテンは閉まっていた。
「カーテン開いてたの・・・?」
「うん。珍しいねってみんな言ってた。全くしゃべらないし・・。」
それ、私じゃない。みんなが見ていたのは私じゃない。
私が見ていた蒼井も、蒼井じゃない・・・ってこと・・・?
「とにかく見つかったし、今日は帰るぞ?全く、目玉さんなんて、もっとロクなこと考えろよ。」
「まって。確かめたいことがあるの。」
「確かめる?何を?」
蒼井は首を傾げ、眉間にしわを徐々に寄せた。
「何を確かめるんだよ。」
「私の偽者と蒼井の偽者が誰か。確かめなきゃ。目玉さんにつながるかもしれない!」
「偽者ってどういうことだよ。」
「あの時みんなが見てたのは私じゃないって言いたいのよ。」
「・・・どういうこと?」
分かってないみたいだ。この鈍感野郎!ってつっこみたいけど、信じがたいことだし、言っても信じてくれないだろう。
「先に帰ってたら?明日全部説明してあげる。」
「つまり、昼休み見た星羅は、お前じゃないってことか。」
横に並びドヤ顔で見てくるけど、気付くの遅すぎるでしょ。
「昼休み、屋上に呼び出した蒼井も、おそらくアンタじゃないわね。」
「仮にそっちが本物だったらどうする?」
「バカね。蒼井は高所恐怖症よ?どうして高い所にわざわざ行くのよ。」
「よーく分かってんじゃねぇか。要も辻本も、先に帰ってろ。この先は、俺たちだけで行く。」