碧海side

帰ってきたよ。
桜舞うこの季節、君がいる町に。

あの日、君と別れてから、僕は久しぶりに泣いたよ。
お母さんが死んでから、一度も見せなかった涙が溢れてきたよ。

あれから僕は、新しい友達もできたし、
親友と呼べるような、大切なひとができた。
親父が再婚して、お母さんができた。
お母さんが死んでから空っぽだった席がひとつ、埋まった。
新しく妹の席もできた。新しいお母さんの、連れ子なんだ。

だけどね、『好きなひと』、『愛しいひと』
そんな人はできなかった。
その席はもう埋まっていたからね。
君がそこの席にずっと居たんだよ。

長かった。この10年間。
だけど僕は、君に会うあの約束があったから
今まで頑張ってこれたんだ。


『約束の日まであと、3日。』