後悔とは、後に悔やむ、と書く。まさにこの言葉通り。ここまで後悔したのは初めてだろう。あの時あんなことが起きなければ―

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高一の夏、あともう少しで夏休みに入ろうとしていたときだ。
私は昔から本を読むのが好きで、昼休みは、いつも図書室に行くのが日課だ。その日も図書室へ行ったときだ。普段自分一人の図書室にその日は先客が居た。肌がとても白く体も細い男の子が居た。自分の視線に気付いたのだろう。相手が顔を上げ、目があった。

「こんにちは」

とても綺麗な声だった。だが少し低めの声だが、とても透き通った声だった。

「あ…こ、こんにちは…」

私は物心ついたときから男の子が苦手だった。相手が気前よく挨拶してくれたのに今回もまた、下を向き声が小さくなった。彼は私のそんな仕草に気付いてくれたのだろう。

「男性は苦手?」

優しく聞いてきた。
「…少し…ごめんなさい…」

相手を不快に思わせてしまう。そう思
い、せめて顔を見てきちんと謝ろうと顔上げたときだ。

「無料しなくていいよ。」

「えっ?」

「苦手なことの一つや二つ誰だってあるからね。」

彼はそれだけ言って、本に顔を戻した。
今思えばこの時既に彼に惚れていたのだろう。彼の優しい声ときちんと視線を合わせるその瞳に。