玄関から金属音が響く。
続いて、低く沈んだ声。


『分かった。助けてくれてホントにありがとう』


押し黙る私に諦めたのか、小さなため息をついて先輩は別れの言葉を残した。


『じゃあ、さよなら』


飲み下したはずの感情が込み上がる。
目頭が熱くなり、視界が歪んできた。


静かになった受話器の先。
嗚咽を殺しきれない口許が呟く。


『ゴメンナサイ……、高瀬先輩』