静かにドアを閉めて鍵を掛けた。
スローモーションの様にゆっくりと、甘い香りと何かの期待を残しながら振り返ると、案の定ふわふわとした雪が舞っていた。


マンションのホールを出れば、足元は白く染まり視界は白い吐息に遮られる。
何かを探すように、目を細め雪の顕れる暗い空を見上げた。


主が居るはずのない部屋の窓は、今は見えない。


何度かその場所を行き来して、足は自然と帰路へ向きはじめた。