何度も、何度も往復したのだろう。
雪がそこだけ溶けていた。


マンションの前、先輩の足跡はそこから延びていた。


不意に思い出される、高瀬先輩の香り、肌の温もり。
切り替えたはずのスイッチが揺さ振られる。


『なあ、無理そうかい?』


佐藤さんの声で我に帰る。


「ごめんなさい……、今日はちょっと」


『そうか……、まっ、しょうがねえ。悪かったな、無理言っちまって』


答えたのは一葉としての私だった。