ブロロロロ…

『お嬢様、着きました。』

「ええ、ありがとう。」

『では、いってらっしゃいませ』

「行ってくるわ。ではまた帰りに。」

コツ、コツ、コツ…

校舎まで続く長い道のど真ん中を、堂々と

歩く。あたしの存在に気づいたまわりの

人々は、自然に真ん中をあける。

『きれいね…』

『今日も美しいわ…』

そんな言葉がこそこそと聞こえてくる。

腰まであるきれいに巻いた長い黒髪。

陶器のような真っ白な肌。

ぱっちりした大きな瞳、きれいな二重。

スカートからのびる細い足。

この学校1の美少女であるあたしの名は…

田中愛瑠。

「みなさま、ごきげんよう」

『愛瑠様、ごきげんよう!』

『今日もお綺麗ですわ…!』

「ふふ、ありがとう」

あたしが少し微笑むだけで、男女問わず

頬が染まる。

『愛瑠ー。おはよ、あんたいつも大変ね』

「あ、紫音。おはよ」

まわりの目も気にせずあたしに話しかけて

きたのは、あたしの親友。

白川紫音。-シラカワ シオン-

明るい茶色に染めた綺麗なセミロングの髪。

マスカラ、チーク、グロス、化粧ばっちりな人形のような顔。

すこしつり目の大きな目をした紫音は、少しきつそうな子に見える。

お嬢様にも関わらず、丁寧な言葉を使わず

ふつうの女子高生のような口調の彼女は、

まわりからはあまり好かれていない。

『どうして愛瑠様はいつもあの方とおられるのかしら?』

『きっと愛瑠様はお優しいから、しょうがなく付き合ってらっしゃるのよ』

そんな声が聞こえてくる。