春 『母上様、桜が咲き始めましたね!』 鶴の君の明るい声が響く 『少し、庭を見に行ってもよろしゅうござい ますか?』 『遠くには行かないようにね』 左大臣家の庭は、とてもとても広い。 迷子になることなんてざらにある。 そのため当然、お付きがついて来る。 『姫様、一人でよろしいのですか?』 『遠くまで行かないから、今日は一人にさ せて』 『わ、わかりました。 何かありましたら、すぐにお呼び下さい ね』