何度も繰り返したが、結局、頼れる人は1人しかいなかった。
彼の名は「田島 陽平」。
父の弟の息子、いわゆる、あたしにとって「いとこ」にあたる人物だ。
家が近いということで幼い頃は毎日のように遊んでいたし、あたしと陽平は中学まで同じ学校に通っていた。
彼は19歳のとき、付き合っていた彼女の妊娠がきっかけで、通っていた大学を辞めて結婚した。
そして、今年の春に離婚。
理由は、嫁の浮気らしい。
陽平からそのことをメールで聞いたとき、やりたいことを我慢して頑張っていた彼を知っている分、あたしはその嫁が憎くてたまらなかった。
あたしが今「陽平なら」と思っているのは、彼がまだ家族と住んでいた県営住宅を出ていないからだ。
家賃は安く、月に3万くらいだと聞いたことがある。
そこなら、家賃を半分払っても、1人暮らしをするお金を貯めることだって可能だと思う。



