「あれって審査あるんだよね? 難しいって聞いたことはあるけれど、俺も応募してみよっかなぁ」 そう言って、彼は鼻歌を口ずさみながら、すれ違う女の子を目で追っている。 「無理だよ、あたしたちは」 話し方からして、千草は何も知らないのだとわかった。 きっと結婚していたことも聞いていないのだろう。 「陽平は新婚枠で入ったんだよ」 別に隠すことでもないと思ったし、いずれ気付くだろうから、あたしは陽平が若くして結婚したことと、去年の春に離婚したことを彼に教えた。